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2024.03.18

スポーツ傷害とPRP療法や体外衝撃波治療とその組み合わせ療法 

今回は成長期 成人期 中高年期それぞれのスポーツ疾患に対し、当院が推奨する最適な治療方法を紹介します。
傷害障害(繰り返す慢性的な疲労性のもの)と外傷(1回で起こる)に分けることができます。

(基本治療)スポーツ障害は、筋力不足や柔軟性低下や筋インバランス(アンバランス)が原因であることが多く、また組織の修復に要する期間よりも早く次の負担がかかる修復不全やそれに必要な代謝の異常からくるものが多いです。外傷では損傷した組織の修復力を早めたり増強させることは、早期の確実なスポーツ復帰には必要なことです。そういった意味で、すべてのスポーツ傷害外傷障害も)の治療には、筋力不足や柔軟力不足や筋のインバランスを改善させ、それらの修復不全や代謝異常を改善させるリハビリテーションが第一選択となり、当院ではリハビリテーションを重要視しています。当院でのリハビリテーションには理学療法や物理療法や装具療法(インソールやサポーターなど)などが含まれ理学療法士が担当します。
物理療法骨疾患であれば骨用の低出力超音波治療器(LIPUS)軟部組織疾患であれば微弱電治療器(エレサスやアキュスコープやマイオパルス)超音波治療器を用います。それらは組織修復や代謝を促進させる物理療法機器として非常に有用です。
当院のリハビリの特徴として、医師の指導の下で、理学療法士理学療法物理療法と次に示す体外衝撃波治療を組み合わせて治療を行います。体外衝撃波治療には詳細な照射部位を決定するために超音波画像検査を行ってから照射をするため、体外衝撃波の治療資格の持った放射線技師が照射する場合がありますが、基本的にはすべて理学療法士自身が超音波画像検査を用いて位置確認をしたのちに体外衝撃波を行います。集束型の体外衝撃波治療は基本的には医師の指導の下で進めなくてはならないので、初回は特に医師が直接照射することもあります。

また、それらの体外衝撃波治療再生医療である、PRP療法(多血小板血漿療法)幹細胞療法を組み合わせて行うことがあります。PRP療法や幹細胞療法は、当院では基本的に他の治療を行っても改善しないときに行う治療となっています。それぞれの治療の役割や特徴を理解して、うまく組み合わせることにより、早期にしかも確実にスポーツに復帰することが期待できます。しかしながらそれらの手術以外のすべての保存的療法には限界があることも理解する必要があります。組織の損傷が大きすぎる場合には、修復が望めず手術療法が必要な時があります。保存的療法にこだわりすぎると、スポーツ復帰時期が遅れる場合もあります。舟状骨骨折第5中足骨骨折ジョーンズ骨折)はそれらの良い例です。手術した方が圧倒的に早く確実に復帰ができます。それらはハーバートスクリューといって、手術で用いるスクリューのネジのピッチの違いにより骨折部分を圧迫固定する方法で、それらのスクリューを使った技術を用いた手術であれば早期の確実な復帰が見込めます。保存的療法にこだわる必要は全くありません。
しかしながら、手術をすることで半年或いは1年以上をスポーツ復帰に要する疾患もあります。特に前十字靭帯損傷遊離した骨片を認める終末期の離断性骨軟骨炎などがそれらに含まれます。手術した方が良いのはわかっているが、手術をすることで、希望する或いは最後の大会や舞台に間に合わないということもあるでしょうから、場つなぎ或いは時間稼ぎのために上記の保存的治療を行うことがあります。もちろん手術を選択しないで上記の保存的療法を行うことによるリスクもあるので、そのリスクを理解したうえで保存的療法を進める必要があります。例えば前十字靭帯損傷があるのに、手術をせず保存的療法を進めると、治癒能力が極めて低い半月板損傷や軟骨損傷を誘発させたり悪化させたりするので、スポーツが終了した後の人生に影響を及ぼす変形性膝関節症になることもあり得ます。肘や膝や足に発生する離断性骨軟骨炎も同様です。放っておくと変形性関節症に進行していきます。
それぞれ年代により或いは時期によりどの治療を選択すれば良いのか保存的療法によるリスクはどの程度あるのか?手術するとどの程度の期間がかかるのか?など、そういった相談も当院は受け付けております。遠慮なくご相談いただければ幸いです。

さてこれから、自分の血液を採血してそれを遠心分離機で加工する多血小板血漿であるPRP療法と体外衝撃波治療をどのように選択するかについてお話しします。
PRP療法と体外衝撃波治療はいずれも組織修復を促し炎症や疼痛を緩和させる役割があります。一般的には疼痛緩和よりも組織の修復をより多く期待する場合にはPRP療法を選択します。或いは体外衝撃波治療だけでは修復が得られない場合にもPRP療法を選択します。しかしながらPRP療法の治療のあとは、しばらく固定や安静期間が必要ですので、しばらく練習や試合に出られなくなります。そういった意味でPRP療法基本的には治療に時間がかけることができるオフシーズンに行うことをお勧めします。またプロ野球の肘や肩の投球障害などに対して、オフシーズンに悪化予防の意味で肘の靱帯や肩の腱板にPRP療法を行うことにより、手術せず少しでも長持ちさせることが期待できます。当院では6年間オフシーズンにPRP療法を続け今も大リーグで活躍を続けている投手もいます。
 一方で、炎症や痛みや可動域の改善を期待するとき、或いはできるだけ休ます、練習や試合を続けたい場合には体外衝撃波衝撃波がお勧めです。痛みがメインの場合にはお勧めですが、痛みが改善するのは比較的早く、また組織の修復は一定の時間がかかるため、それらのタイムラグがあります。痛みが早期に改善したからと言って組織が修復されたわけではないということを理解しておく必要があります。そういった意味で体外衝撃波治療を乱用することには十分注意が必要です。競馬の馬の疲労骨折の治療に当初体外衝撃波治療が痛みが取れるからと言って重宝されていた時期がありました。しかし馬はそのタイムラグがあることを理解できないので、痛みが取れたため治ったと思い無理に走りすぎて完全骨折を起こしてしまうということが多々起こったので、体外衝撃波治療は競馬の馬には禁止されています。本当は周りの人間の責任ですね。人間でも同じことが言えます。痛みが取れたからと言って治ったと思い、無理をしてしまうと修復が得られる前に組織の破綻をきたすことになるので、レントゲンやエコーやMRIなどで組織の修復を客観評価して復帰の時期を判断することが非常に重要です。
基本的には、照射時に多少の痛みを伴うという以外には体外衝撃波治療そのものによる有害事象はありません。体外衝撃波治療をして組織の破綻を来すのではなく、鎮痛作用が得られたため無理をして組織の破綻を来すことがあるということです。体外衝撃波治療をして悪化したという体外衝撃波治療を悪のように言う人がいますが、そのメカニズムを理解していない人です。 
また、当院では体外衝撃波治療PRP療法との組み合わせ療法を行っているので他院のようにPRP療法だけを行っている施設より、それぞれの鎮痛作用を有意に持つ体外衝撃波治療組織修復作用を有意に持つPRP療法のそれぞれの有意性を利用した組み合わせ治療の相乗効果が期待できます。当院では基本的にPRP療法を受けられる方には体外衝撃波との組み合わせ療法をお勧めしています。

次にそれぞれの時期における疾患別のおすすめの治療方法を紹介します。

Ⅰ成長期のスポーツ傷害

・疲労骨折腰椎分離症には体外衝撃波治療が第一選択です そこに骨用の超音波であるLIPUSを組み合わせることで相乗効果が期待できます
腰椎分離症の場合、病期(初期や進行期や終末期)にもよるが、初期や進行期であれば治療に専念しつつ体外衝撃波とLIPUSをすれば、より確実により早く骨癒合が得られるという結果が当院の研究でも得られています。一方で終末期には骨癒合は期待できませんが、疼痛コントロールの意味で体外衝撃波治療は有効です。
疲労骨折舟状骨第5中足骨などはスクリューなどを入れる手術をした方が早く確実に復帰できるので手術を含めて検討してください。
第2第3中足骨疲労骨折骨盤や大腿骨や脛骨などの疲労骨折裂離骨折にも体外衝撃波治療とLIPUSの組み合わせが有効です。新鮮骨折の手術後に、LIPUSを使用することは保険適応で認められていますが、術後PRP療法体外衝撃波を組み合わせても当然早期の確実な骨癒合が期待できます。手術後に組み合わせることはこれから多くなってくるでしょう。
離断性骨軟骨炎足関節)にも体外衝撃波が第一選択です。同様にLIPUSを組み合わせることで早期の確実な病巣の修復が期待できます。遊離した骨片がある場合には、手術をしないと改善しません。骨片摘出だけであればすぐに復帰できるが、骨移植を含めた骨片整復固定を行う場合は復帰までかなりの期間を要するので、最後の大会まで体外衝撃波治療を行って、その後に手術をするという選択肢もあります。ご相談ください。
膝の離断性骨軟骨炎は時々骨の正常分化であるFCI(膝の骨端骨化不整)と鑑別が困難なことがあります。FCIは6歳前後までで発生すること、サッカーやバスケットなど激しいスポーツで痛みが出現したり、関節面の骨の異常が認められた場合があります。その場合にはCTMRIなどの精査をして、たとえFCIである可能性があっても、痛みを伴っていたり、MRIT2強調画像で高信号域があれば、離断性骨軟骨炎(OCDという診断の元、体外衝撃波治療を行う場合があります。特にスポーツ活動を激しく行っている人は、関節面の骨の異常のまま激しいスポーツを続けることで軟骨損傷を誘発する可能性があるからです。多くの場合、体外衝撃波を照射したときに、FCIであれば痛みを伴わないですが、OCDであれば痛みを伴うので、その時にOCDであることが判明します。関節面を正常にすることが軟骨損傷を予防することになるので、OCDFCIを鑑別するということよりも、激しいスポーツ活動をするなら骨の関節面を正常にするために体外衝撃波治療を行うという認識でよいと思います。
・骨端症オスグッド病シーバー病など)はLIPUSが第一選択であるが、疼痛コントロールや骨片や亀裂の早期癒合を希望する場合に体外衝撃波治療を組み合わせることもあります。
・骨端線離開(上腕骨のリトルリーガーショルダー骨盤の骨端線離開)にも低出力での体外衝撃波治療とLIPUSの組み合わせは成長障害を起こさず確実に治癒期間を短縮してくれます。
・子供の足首や手首の剥離骨折は、発症当初、骨片が軟骨性であったりしてレントゲン撮影で見逃されていることがあり、のちの検査で陳旧性剥離骨折となって見つかる場合があります。その古くなった剥離骨片を骨癒合させる場合も体外衝撃波治療とLIPUSの組み合わせが有効です。剥離骨折は靱帯に引っ張られて起こるもので、骨癒合をしておくことで靱帯の不安定性を改善させることができます。
・二分(分裂)膝蓋骨や足の母指球の種子骨障害外脛骨障害有痛性三角骨障害といった、骨癒合不全性の障害に対しても体外衝撃波治療とLIPUSの組み合わせが有効です。ただし外脛骨障害有痛性三角骨障害足関節拘縮偏平足が関与していることが多く、リハビリやインソールなどを組み合わせることで再発を予防することができます。

Ⅱ青年期や成人期のスポーツ傷害 おもに成長期が過ぎた学生から青年期の疾患

・肩であれば腱板損傷関節唇損傷、肘であれば内側側副靱帯損傷、手首であればTFCC損傷、股関節であれば関節唇損傷やグロインペイン症候群、膝であれば半月板損傷膝蓋靱帯炎、足関節周辺であればアキレス腱周囲の炎症など
基本的には物理療法とリハビリの組み合わせで改善が期待できますが、長期に及んだ病態や重症度の高い病態(発症してからの罹病期間が長い)にもかかわらず、早期の復帰を希望する場合には体外衝撃波と微弱電流の組み合わせを行います。それでも改善しない場合はPRP療法を組み合わせます。
・疲労骨折腰椎分離症も多い時期です。成長期と同様に、体外衝撃波とLIPUSの組み合わせがお勧めです。初期や進行期の分離症の場合は、その治療期間が長期に及ぶことから、治療に専念せず疼痛コントロールを目的に体外衝撃波を行うことがあります。しかしながらスポーツしながらの治療は骨癒合が得られることは期待できないことを理解しておく必要があります。終末期の腰椎分離症の場合でも疼痛コントロールのために体外衝撃波が有効なことが多いです。
・投球障害である肘の靱帯損傷肩の腱板損傷などで体外衝撃波治療微弱電流で改善しない場合は、オフシーズンに或いは長期の離脱を覚悟してPRP療法と体外衝撃波治療を組み合わせることがあります。しかしながら不安定性が強くなった靱帯損傷はいずれ靱帯再建術(いわゆるトミージョン手術)が必要になってくるのでその場しのぎの治療になる可能性があります。
・外傷による骨折骨挫傷で早期の疼痛緩和や骨癒合促進を期待して、体外衝撃波とLIPUSの組み合わせ或いは場合によってはPRP療法を組み合わせることがあります。今まで当院では多くの選手やダンサーが、試合や舞台や発表会や選考会やテストが近い時には無理と思われる期間内で間に合わせてきました。もちろん治療の限界があります。
・肉離れ打撲後血種の場合は拡散型圧力波微弱電流の組み合わせは有効です。肉離れの重症度が高い時には、早期からPRP療法を行うことがあります。スペインリーグのバルセロナFCでは肉離れが起こればPRP療法をすることが治療のプロトコールに組み込まれています。
・腸脛靭帯炎膝蓋靱帯炎アキレス腱炎テニス肘ゴルフ肘といった腱炎或いは腱の付着部炎に対しては基本的には軽度のものは物理療法とリハビリの組み合わせ、中等度から重症になればそこに体外衝撃波治療を行いそれでも改善しなければPRP療法を組み合わせます。
・半月板損傷TFCC損傷といった軟骨性の損傷に対しては損傷の形態にもよりますが体外衝撃波治療に有効性があります。また重症度が高く体外衝撃波治療だけでは改善しない場合には、PRP療法を組み合わせることがあります。半月板損傷縫合可能な不安定な損傷で手術が第一選択となることがあります。不安定な半月板損傷を放っておくと、のちに半月板が本来あるところからずれてしまって、変形性膝関節症に進行する可能性が一気に高くなります。不安定な半月板損傷体外衝撃波やPRP療法で安定性が得られることがないので、重症の半月板損傷にはそれらの治療の限界を知っておく必要があります。
陳旧性になった靱帯損傷ですが、膝関節内側側副靱帯損傷外側側副靱帯損傷足関節の外側靭帯損傷三角靭帯損傷や膝蓋骨の脱臼に伴うMPFL(内側膝蓋大腿靭帯)損傷 或いは肩の前方脱臼に伴うAIGHL(前下関節上腕靭帯)損傷やMGHL(中関節上腕靭帯)損傷や手関節の外傷性のTFCC損傷アキレス腱断裂、或いは靭帯損傷に伴う剥離骨折といったスポーツ傷害は、受傷による出血成分が残っている間、本来ならばある一定の期間 固定をして幹部の安静を保つことが重要です。しかしながら、医療従事者の誤診や自己判断による放置で患部の修復が得られず、不安定になっていわゆる陳旧性の骨折或いは靭帯損傷となっていることを多々認めます。それらの靭帯或いは腱や剥離骨折部分を修復させて関節の安定化を図るためには、多くの場合手術が必要になってきます。靭帯修復術といって切れた靭帯同士を繋ぎ合わせる手術や腱を繋ぎ合わせる手術であれば、数ヶ月間で復帰が見込めますが、長期間経過して解剖学的に靭帯損傷部分や腱損傷部分が大きく開いている場合には再建術といって代わりの腱や靭帯を移植するような手術が必要になることがあります。そのような手術をすれば半年以上スポーツ復帰にかかることになります。

Ⅲ中高年のスポーツ傷害

肉離れの治療には拡散型圧力波微弱電流を組み合わせますが、重症度の高い場合はそこにPRP療法を組み合わせる場合があります。
アキレス腱部分損傷の場合、PRP療法や体外衝撃波治療と装具療法や微弱電流を組み合わせることで早期復帰を見込めます。
難治性の(診断を受けて6か月経過しても改善していない)足底筋膜炎体外衝撃波治療が保険適応となっています。 
ゴルフ肘やテニス肘といった上腕骨外側上果炎や内側上果炎体外衝撃波が適応です。それでも改善しなければPRP療法を行うことがあります。
膝や股関節や足関節や肘関節の変形性関節症に対してはMRI精査でBML(骨髄異常病変)が認められれば体外衝撃波治療の第一選択です。
・急に痛みが強くなった場合にはSIF(Subchondral insufficiency fracture)という軟骨下不全骨折になっている場合があります。放置しておくと骨壊死に進行する場合があるのでMRI精査してSIFKBMLが認められれば体外衝撃波治療を受けてください。広範囲にBMLがある場合は特に膝のSIFであるSIFKである可能性が高いので、しばらく痛みが軽減するまでスポーツ活動は控える必要があります。
変形性膝関節症になり、関節水腫や滑膜炎がある場合には、関節内に次世代のPRP療法であるAPS療法(自己蛋白質溶液)を入れる場合があります。APS療法と体外衝撃波の組み合わせ治療で軟骨下骨の病態が改善され、軟骨の増生が認められた症例を複数経験しました。当院では、膝関節や股関節や足関節の変形性関節症APS療法を行うことができます。またそれでも改善しない場合関節内或いは骨内に幹細胞を注入することで関節内の病態や軟骨下骨の病態を改善させることを期待する治療も現在申請中です。いずれも体外衝撃波治療と組み合わせることにより治療効果が増強することが期待できます。
・指の変形である拇指CM関節症や指の腱鞘炎であるばね指に対しては体外衝撃波治療が第一選択です。他院ではステロイド注射を勧められますがスポーツ傷害に対してステロイド注射を行うと炎症の軽減とともに治癒能力の低下を招き組織の破壊を進ませる結果となります。ご注意ください。
初期の骨壊死膝関節骨壊死や大腿骨頭壊死)の場合には体外衝撃波治療が適応となります。人工関節置換術の時期を遅らせたいときには、骨内に幹細胞投与することをお勧めします。

それ以外にも体外衝撃波治療やPRP療法が有効なスポーツ傷害がたくさんあります。是非ご相談ください。

また鍼治療など有用な代替療法や、筋膜リリースなどの注射療法も有用な時があるのでうまく組み合わせて行うことが重要だと思われます。是非ご相談ください。

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